ココ・ファーム・ワイナリーにインタビュー!野生酵母発酵の日本ワイン

野生酵母(天然酵母)で造られるワインが静かなブーム。野生酵母を使った日本ワインに、いま注目が集まっています。見えないけれど奥深い酵母の世界を知れば、もっとワインを美味しく楽しめるはず!ワイナリーに聞いた、その魅力とは?

さまざまな個性の日本ワインのなかでも注目株。ぜひ味わってみたい、野生酵母(天然酵母)で造られたワイン。

ワインの原料であるブドウがワインに変わるために、なくてはならないのが酵母のはたらき。個性豊かな日本ワインが登場する中で、今、特に注目を集めているのが野生酵母(天然酵母・自生酵母)を使ったワインです。見えないけれど奥深い酵母の世界を、野生酵母によるワインづくりの草分け的存在、『ココ・ファーム・ワイナリー』に聞きました。知れば知るほど、奥深い発酵の世界にハマっていくはず!

※画像はイメージです。

写真左から:
2018 タナロゼ (こころみシリーズ)/SOLD OUT
2019 ラ・フロレット ハナミズキ・ブラン Cuvee KOGANEIRO/SOLD OUT
樽生 赤ワイン/SOLD OUT
ヤマブドウ ナチュラルスパークリング 2019/SOLD OUT

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『ココ・ファーム・ワイナリー』は、野生酵母発酵の日本ワインの草分け的存在。ほとんどの銘柄を野生酵母(天然酵母)で造り出しています。

栃木県・足利市に位置する『ココ・ファーム・ワイナリー』は、1950年代よりブドウ畑を開墾。特殊学級の中学生たちと、その担任教師・川田昇(かわたのぼる)氏によって山の急斜面に葡萄畑が開墾されました。1969年には、この葡萄畑の麓で、指定障害者支援施設『こころみ学園』がスタート。1984年から、有限会社ココ・ファーム・ワイナリーとしてワインをリリースし始めています。知的障害を持った人たちをはじめ、みんながいきいきと力を発揮できるあたらしい農業の在り方をさぐり、自社農園では除草剤を一切使っていません。また、野生酵母(自生酵母)で丁寧に造られたワインは、国際線のファーストクラスに採用されたり、首脳会談で各国の要人をもてなす日本ワインとして饗されたりするほど。味わいの面でも、世界的に高い評価を得ています。

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そもそも野生酵母ってなあに?天然酵母、自生酵母とは違うもの?また、添加酵母とは?

野生酵母によるワイン造りの経験が豊富な『ココ・ファーム・ワイナリー』の醸造部長・柴田豊一郎(しばたとよいちろう)さんに、酵母についてお聞きしました。「酵母と一口に言っても、酵母菌には数多くの種類があります。一般的なワイン造りでは、ワインを造るのに適している"サッカロマイセス・セレビシエ"という酵母を抽出して培養したものを、ブドウ液に添加することが多いです。このサッカロマイセスは、発酵力が高く、アルコールをたくさん作ることができ、香りもよい酵母。ただし、この酵母自体ももちろん天然のものなので、決して人工物を添加しているわけではありません(柴田さん)」。
つまり「野生酵母」「天然酵母」の対義語は、「人工酵母」というわけではなさそうです。
「私たちの造っている"野生酵母ワイン"は、ブドウの果実にもともとついている酵母を自然に発酵させて、じっくりとサッカロマイセスが活発になるのを待つというやり方です。ただし、添加酵母を使用しているワインも、添加しているのはもともと天然由来の酵母。ある意味"天然酵母ワイン"だということもできます。ですので、ココ・ファーム・ワイナリーでは、あまり天然酵母という呼び方はせずに、野生酵母とか、自生酵母と呼んでいます(柴田さん)」。

※この記事内でも、自然発酵の場合は野生酵母と表記します。また、培養酵母を添加する場合を添加酵母と表記します。

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これが野生酵母の姿。自然発酵の場合は、いくつもの酵母菌がかわるがわる働いています!

ココ・ファーム・ワイナリーでは野生酵母を使ったワインをより深く知るために、東京大学の研究チームと共同で調査をしました。それによって、発酵課程でどのような酵母が活動しているかが判明。その姿をとらえた、貴重な写真を見せていただきました。
左:発酵の初期段階で活発に活動する酵母、ハンセニアスポラ・ウバラム。野生酵母でしか見られず、アルコールはあまり作りませんが、少しずつ炭酸ガスを出したりしています。このほかにも数十種類の野生酵母が入れ替わり立ち替わり活動し、発酵をすすめてゆきます。この発酵の初期段階では、添加酵母として使われるサッカロマイセスはほとんど活動していません。
右:数々の野生酵母が活躍した後、最後に台頭してくる酵母が、サッカロマイセス・セレビシエ。発酵力が高く、アルコールをたくさん作ることができ、香りもよい酵母なので、添加酵母として一般的に使われています。『ココ・ファーム・ワイナリー』のように野生酵母で発酵させる場合は、数々の酵母が活躍したあと最後に現れ、活発に働き始めます。

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数々の酵母が複雑に働き、最後にアルコール発酵へ至る野生酵母発酵。時間も手間もかかる分、味わいに深みが。

アルコール発酵に寄与し、最終的にワインらしい味わいを作り出す酵母は、前述したサッカロマイセス・セレビシエ。しかしながら自然発酵の場合は、その前にさまざまな種類の野生酵母が活発に働いていることが判明しました。
写真A:ココ・ファーム・ワイナリーで自然発酵させたブドウ液。数日を経てサッカロマイセス・セレビシエが優勢になり、表面を覆ったところです。添加酵母を使用した場合は、1〜2日で確実にこのような発酵がはじまりますが、自然発酵でいくつもの野生酵母のバトンタッチを経てこの状態になるまでには、1週間以上かかることも。この状態になれば、あとはサッカロマイセスが頑張ってくれるので一安心だけれど、こうなるまでにはいろいろと神経を使うそう。
写真B:さらに数日が経つと発酵が進み、表面が崩れて、循環が始まります。ココ・ファーム・ワイナリーでは、問題なければ特に触らずにじっと待つそうです。もっとアワアワになってくると、下からボコッと大きめの泡が出現。液面下ではシュワシュワと発泡してる状態で、だんだんアルコール度数も高まっている頃です。添加酵母を使用した時と比べて、かなりゆっくりした進行です。
写真C:さらに発酵が進み、安定した段階に。タンクの中が細かい泡で循環している状態です。アルコールも出てきていて、酵母が糖分を使い尽くし、だんだん液面の泡が消えてきます。
写真D:発酵が終了し、澱引きをした残りの液。頑張った何種類もの酵母たちがたくさん沈殿している状態です。このように見ていくと野生酵母ワインと添加酵母使用ワインは、アルコール発酵という結果は同じでも、それまでの道筋が大きく異なっていることが実感できます。

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野生酵母でワインを造るということ。その難しさとは?また、手間ひまがかかる行程を選ぶ意味とは?

実は、もともとは添加酵母によるワインも並行して造っていたというココ・ファーム・ワイナリー。2007年に、野生酵母を中心にやっていこう、という決断をしたそうです。醸造部長の柴田さんは、「単純に、野生酵母のワインの味わいが好きだった、ということもありますが」と笑顔で語ります。「ワインを、より"畑"から考えていったとき、良質のブドウがあればそれだけで美味しいワインができる、ということに魅力を感じるようになりました」。

自然発酵のワイン造りで、難しい部分は?
「自然発酵では、添加酵母にたよることはできず、香りを引き出してくれるような機能のある添加酵母を使うこともできないので、ブドウ自体の質や香りをしっかりと見極めなくてはならないんです。収穫したときに適切に熟しているか、酸味や味わい、種や皮がしっかり熟しているかなどを丁寧に見ます。また、ブドウの傷みなどにも気をつけなくてはならないので、畑でブドウの質を上げる必要があります。さらに野生酵母による発酵は、時間も手間もかかります。よくよく観察しなくてはいけないし、発酵にも気を使ってあげなくてはいけない。発酵が終わる時間が読めないという難しさもあります。添加酵母だと、だいたい一週間くらいで発酵を終えて熟成に入れるのですが、野生酵母だとそれがいつになるかわからない。長いもので、発酵が終わるまで一ヶ月くらいかかることもあります。そうするとタンクのローテーションの管理が難しくなったりするので、ある程度設備にも余裕がないと厳しいという面はあります(柴田さん)」。

手間も時間もかかるという自然発酵のワイン造り。それでも挑戦するココ・ファーム・ワイナリーの想いとは?
「大変ですがそのぶん、ブドウ作りから収穫の見極め、選別や仕込みなど、すべてにおいて仕事が丁寧になっていくように思います。よいブドウさえ収穫できれば、自然といいワインになってくれるんです。丁寧にやれば、ブドウはきちんと応えてくれる。寄り道しながらではあるけれど、ブドウの声を聞きながら、ブドウに素直に、ワインを造っています(柴田さん)」。

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知れば知るほど、味わいが深まる、野生酵母発酵のワインたち。ブドウと酵母のがんばりに想いを馳せて。

野生酵母・自生酵母による、手間ひまかかる自然発酵を選択しているワイナリーや銘柄は、他にもあります。ココ・ファーム・ワイナリーのタナロゼ(写真上段左)のようなロゼタイプもあれば、赤や白も。またwa-syuでは、野生酵母発酵で造られたスパークリングワインも人気です(写真下段)。ブドウの品種や地域はさまざまですが、いずれも丁寧なワインづくりに定評のあるワイナリーが発信する、こだわりの銘柄です。ブドウ作りや発酵過程の物語を、作り手の想いと共に味わえるのも、日本ワインの素敵なところと言えそうです。

※画像はイメージです。

写真上段左から:
2018 タナロゼ (こころみシリーズ)/SOLD OUT
樽生 赤ワイン/SOLD OUT
メルロー/SOLD OUT
2019 ラ・フロレット ハナミズキ・ブラン Cuvee KOGANEIRO/SOLD OUT

写真下段左から:
ピエ・ド・キューブ 2019(赤) ペティアン/SOLD OUT
2018 Blanc de Blancs Effervescent-Ⅰ/SOLD OUT
ヤマブドウ ナチュラルスパークリング 2019/SOLD OUT
山形県産デラウェア スパークリング 2019/SOLD OUT

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ココ・ファーム・ワイナリー
栃木県足利市田島町:(有)ココ・ファーム・ワイナリー

ココ・ファーム・ワイナリー(COCO FARM&WINERY/ここふぁーむわいなりー)は、栃木県を代表するワイナリー。1958年に中学の特殊学級の教員だった川田昇(かわたのぼる)氏と特殊学級の子どもたちが、2年がかりで平均勾配38度の3ヘクタールの畑を開墾。その麓にこころみ学園が設立されました。その後ココ・ファーム・ワイナリーが設立され、醸造の認可が下りワイン造りを開始。急斜面の畑地は葡萄の生育に良いだけでなく、子どもたちの心身を鍛えるためにも重要な役割を果たしました。ワイナリーの敷地内には、こころみ学園栽培の新鮮野菜やハーブ、足利マール牛など、地元の農産物や安全な素材を中心に、 自家製ワインとともに美味しい料理が楽しめるココ・ファーム・カフェや、葡萄畑や醸造タンクも見渡せるワインショップが併設されています。

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